アウフヘーベンとシナプス結合の同一性

もともと、脳に対してはだいぶ前から興味があった。
 
私は小学校の頃から前兆はあったのだが、中学校に入ったころから「哲学的思考」が本格的に
芽生えはじめ、その後、成人式を迎える頃まではひたすら様々な「哲学的思考」に明け暮れる
日々を送った。
そんなある日、ふと、「こんなことをつらつらと考えている私自身の脳というのは、いったい
なんなんだ?」という疑問にぶつかったことがある。当時はそれ以外にも考えるべき疑問が
山ほどあったので、真剣に脳について学ぼうと考えることはなかったのだが、数年おきに
その疑問を思い出しては脳に関する本を読んだりしていた。
しかし、どの本を読んでも難しい言葉だらけ、その割にはイマイチ本質が見えず私が期待する
ようなものが無い。
いつの間にか、脳について考えることはさほど有用ではないのではないか、自分のカンが
間違っていたんだな、というように思うほどにまでなってしまっていた。
 
それから時は経過し、30歳の誕生日を迎える直前、茂木先生を知った。
面白そうな人だなと気になっていた人が、調べてみればたまたま脳科学者だったという感じ。
今一度勇気を出して脳に関する本を読んでみようか、ということで茂木先生の本「ひらめき脳」
を読み、その後出合う「脳整理法」で衝撃を受けることになるのである。
  
ちょうど大学3年生の頃、自分が今まで考え続けてきた哲学的なことと、それまであいまみえる
ことがなかった経済学や国際関係学といった実学的なことが、弁証法という方法論を知った後に
まさしくアウフヘーベンされて融合したことを実感し、自分が飛躍的に成長したことがあった。
 
さらに台湾に赴任してから異文化に身をさらすことがきっかけにもなって、その第二弾とも
いえるくらいの衝撃的な精神的態度および知的革新が起こった。
この第二弾の大きなアウフヘーベンについては理論的に説明できる部分もあればそうでない部分も
あったのだが、「脳整理法」という本を読んで、自分の中で培ってきたすべての分野、たとえて
言えばニュートロン(神経細胞)がシナプス結合したのかもな、と思ったのである。
そしてさらに考えてみれば、脳科学におけるシナプス結合というのは弁証法におけるアウフヘーベン
と本質的にほとんど同じことなのではないか、と気づいた。
さらに、現在読んでいる「意識とはなにか」という本でふれられている「ふり」をする能力も、
弁証法における「対立物の相互浸透」にそっくりなのである。
 
すなわち、私が実存主義を中心として哲学的に考え続けてきたことと、経済学や国際関係学を
中心として実学的に考え続けてきたこと、まさに「正と反」が「アウフヘーベン」されて
「合」に至り爆発的に自分が成長したプロセスというのは、そもそも1000億の神経細胞が
有しており日々人間自体が行っている基本原理とまったく同一のプロセスであるということに
気づいたのである。
私自身が哲学的に求め続けてきたその答えだけでなくプロセスも、自分の脳という1000億個の
ニューロンとその活動の中にあったのである。
この発見は、私にとって衝撃的以外の何ものでもない。人生の中で数度あるかないかの大きな
発見である。
 
そもそも自然科学、社会科学という学問の体系の中で、人間、および人間の諸活動による事象を
扱う分野は非常に多いことにも気づく。研究者として、自らが専攻する分野だけを追及していれば
認められる時代もあったようであるが、そのレベルの楽しみというのはとても小さいものなのでは
ないか。人間、および人間の諸活動全般に興味を持ち、一見それぞれ異なる各分野の事象を
知った上で、すべてまとめてアウフヘーベン(シナプス結合)することができると本質的な
問題解決を導くことができるし、最高に気持ちよいのである。
 
大切な発見をさせてくれて、上記のような思考を生み出すきっかけを作ってくれた茂木先生に
心から感謝します。
 
それにしても、茂木先生の言葉、文章はとても明快で、素人の私が読んでもとっても分りやすい。
茂木先生のブログは難しい言葉が出てきたりしてよくわからない部分も多い?ですけど)
茂木先生をはじめとして三浦つとむさんや渡部昇一先生も言えることなのだが、文章を分りやすく
書ける人というのは非常に深いところで思考していて、常に新しいことを実行し続けていて、
高度な知的生活を送っているということは間違いないと思う。
 
今日、上記を書くに当たってあらためて、こんな人たちのようになりたい、と素直に思った。