茂木健一郎「脳はもっとあそんでくれる」中公新書ラクレ(2008年12月)★★★☆☆


読売ウイークリーに掲載された「脳から始まる」というコラムをまとめた本。
茂木先生の本は面白いのでいつも一気読み。
 

(P.78)
私たちは、昔のことはすでに過ぎ去ったことで、どうすることもできないと思いがちだ。確かに、「事実」においてはそうである。(中略)一方で、私たちの過去に対する認識は変えることができる。むしろそれは、生きもののように変わっていく。過去は、変化する。自分自身のうちで育てることができる。ここに、脳の働きからみた、昔体験したことをふり返る意味があるのだ。

「自分の過去」の総体。
過去の蓄積が自分そのものであるのだから、その過去をどう捉えなおすかという作業も自分で
しか行うことができない。
それは、オリジナル以外の何ものでもないのである。
 

(P.142)
人間と動物の差異といえば、二足歩行だとか、知性の高さだとか、あるいは言語や意識といった高度な認知プロセスに目がいく。同時に忘れてはいけないのは、人間は「感情」の振れ幅もまた大きいということである。腹を抱えて大笑いしたり、人目を憚らず号泣するなどということは、人間ならではのダイナミックな感情表現である。人間とは、つまり、感情の振れ幅の大きい動物なのだ。

都会での生活においては、感情をあまり表に出さず、それ自体のコントロールを求められることが多い。
しかしながら、その感情というものこそ、人間らしさそのものなのである。
人間らしさをもっともっと味わうために、あえて思い切って、感情のダイナミック・レンジを
広げたいと思う。
 

(P.146)
「ニル・アドミラリ」とは、もともとラテン語で「何ごとに対しても驚かない」ことを指す。経験を積み、様々な知識を持つ者は、目新しいことに接したとしても容易には驚かないのである。
情報過多の時代を生きる私たちは、もう少し「ニル・アドミラリ」の態度を身につけたほうがよいのではないか。時代の寵児とされるもの、画期的に新しいとされるものほど、「それがどうした?」と問い続ける。そのようにして、自らの生命の全体性のバランスを決して失わないことが、結局は長い目で見て自由と幸福を深化させることにつながるのである。

豊な感情とニル・アドミラリを同時に持つ。
このバランス感覚が大事である。
 

(P.160)
式の変化に富んだ日本。(中略)このような環境で文化を発展させてきた私たちの先人が、「八百万の神」を敬愛し、「みんなちがって、みんないい」という感性を育んできたのは当然のことだろう。
これまで、単一の価値観ですべてを割り切ろうという試みが、矛盾を引き起こし、悲劇を生み出す様子を、私たちは繰り返し目の当たりにしてきた。日本がこれからの地球社会に貢献していくのであれば、何より、世界は様々な異なるものからできている、という感覚を大切にすることから出発しなければならないだろう。

ダイバーシティがキーワードとなる21世紀。
全世界の人々が、それを言葉としてではなく自然な形で文化として育むことができたら、
この世紀は素晴らしいものとなるだろう。
 
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