胎中千鶴「植民地台湾を語るということ〜八田與一の『物語』を読み解く」風響社(2007年11月)★★★☆☆


台湾における日本統治時代(1895〜1945年)を研究する著者が、大規模な灌漑施設である
「嘉南大圳」を台南県に建設した八田與一についてまとめた本。
 
主に、日本人と台湾人の八田與一に対する「思い」の違いを浮き彫りにしようと努力している。
 
台湾人がどのように八田與一を扱っているか、さらにはどのような感情で向き合っているかに
ついての記述が少なかったことを除けば、日本統治時代を客観的に考えようとする取組姿勢を
含め、良い研究であると思った。
 
八田與一の美談は日本人に受け入れられやすいけれども、日本人として台湾を「統治」し
支配していたという事実を同時に持ち続けることも必要なのである。
 
美談だけを全面に押し出すのではなく、我々は謙虚にすべてを受け入れ、新たな日台関係を
構築していきたいものである。
 
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