外山滋比古「忘却の力 創造の再発見」みすず書房(2008年7月)★★★☆☆

忘却の力―創造の再発見

忘却の力―創造の再発見


忘却の力というタイトルであるが、実際は外山さんが日々思考したエッセイを集めた本。
 
外山さんはが考えていることはどれも非常に興味深い。
外山さんは直観に優れた感受性の高い人であることを伺わせる内容である。
 
こういう話をさらっとできる大人になりたいものである。

(P.2)
若いときに、創意工夫に満ち満ちた人が経験をつみ、知識を蓄えて大家になると、知的活動がはっきり不活発になり、重箱の隅をつつくようなことをして、それを誇りとするようになる。人間はどうも言語知がふえるにつれて創造的でなくなるらしい。
(中略)外界を知るためのことば、知識のはずである。それが充満してくると、おそろしいほど堅い殻をつくって人間を閉じ込めるようになる。
(中略)年をとったもの知りが、何でも知っているように錯覚して、いたずらに頑迷、固陋、ことばの小世界がすべてであるかのように信じるのはいたましい。
(中略)ことばの殻を破ってこそ真の知性である。

(P.28)
われわれは軽い気持ちで他人をよく知っているなどと云うけれども、ほんの上辺のところをすこし見ているに過ぎない。見かけによらない心の深部についてはほとんどなにもわかっていない。自分のことだってそうだ。

(P.44)
魚は流れに向かって泳いでいる。流れに乗った方が楽でよさそうなのに、流れをさかのぼる。流されるままになっているようなのは、死んでいるか、死にかけである。生きのいい魚は求めて逆流に向かって泳ぐ。
(中略)ひとが生きていくにも、逆風、逆境をおかして進むのが正統的であろう。労せずして、すいすい進むものは、思いがけない転覆に見舞われる。コントラ・ヴェンテをくぐってきたものにはたくましい力が具わっている。

(P.75)
狭いところで矛盾は問題になる。大きな世界でなら、矛と盾は両立するのである。

 
★↓ランキングに参加中。ワンクリックするだけで投票になりますので1日1回クリックをお願いします。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ