黒川清「イノベーション思考法」PHP新書(2008年3月)★☆☆☆☆

イノベーション思考法 (PHP新書)

イノベーション思考法 (PHP新書)


政策研究大学院教授、内閣特別顧問という肩書を持つ黒川清さんの作品。
 
「イノベーション思考法」というタイトルに期待して読むも、ほとんどは過去のことと現状分析。
もともと知っていることが多かったことに加え、思考法についてはあまり記載されていなかったことから、
得るものは少なかった。
 
その中でも、印象に残った箇所あり。
 

(P.132)
アメリカは80年代半ばに鉄鋼がつぶれ、優秀な人たちが一斉に外に出ざるを得ない事態が生じました。
アメリカ社会はそこから変わった一面がありますが、日本の企業はつぶれずに生き延びさせたせいで、
アメリカとは逆に、若い優秀な人たちが大企業に入り続けました。
そして、年功序列、終身雇用、退職金という制度を前に、みんなが単なるサラリーマンに甘んじて、
会社ではなく自分をつぶしていきました。
イノベーションが起こりにくい社会を、手に手を取って、せっせと維持し続けてきたわけです。

「会社ではなく自分をつぶして」という言葉が印象的。
まさしくそのとおりである。
こうして、日本のサラリーマンたちは思考能力が奪われ、自己変革を行わなければならないという
意識が欠落し、ゾンビになってしまったのである。