自分のテリトリー

子供の頃、自転車で2つ先の駅まで行くととてつもなく遠いところまで来たような気がした。
風景は家の近くとさほど変わらないのにドキドキ、ワクワクする。
そしてまた、自転車をこぐスピードが上がっていき、日が暮れるまで自転車をこぎ続けたのを
覚えている。
 
高校は実家から電車とバスを乗り継ぎ2時間の場所。
はじめは毎日旅行に行くような感覚だったのに、気が付けばそんな感覚がなくなっている。
 
大学は実家から通える距離ではなかったので、初めての一人暮らし。
初めての夜は誰も知り合いがいないし、遠く離れた場所でとても孤独を感じたのを覚えている。
こんな遠くに来てしまった、ああ、孤独・・・。
でも、卒業するときには、その土地が地元のように感じられたのを記憶している。
 
会社に入ると東京本社採用にもかかわらず、旅行でしか訪れたことのない場所に配属を命ぜられる。
しかしながら、東京本社に異動した後、その土地の顧客を引き続き担当することとなり、東京から
日帰りで毎週のように訪問した。
そこは神奈川や千葉の顧客と同じように、自分にとっての日帰りの領域となった。
 
そして今は台湾にいる。
 
台湾に赴任して約半年後、初めての日本一時帰国のときはとっても日本が懐かしく感じた。
電車の中が静かなこと、道路がとてもきれいなこと、何だかみんな疲れているように見えること、
新しいジュースがたくさん発売されていること、電車代がとても高いことなど、
いくつものことを再発見した。
 
その後1年に3回ほどのペースで日本へ一時帰国しているうちに、そんな新鮮な再発見は
ほとんどなくなっていた。
現在ではたまに日本に帰っても懐かしさはほとんどないし、つい昨日まで日本に住んでいたように
自然とそのなかに入っていけるのである。
 
さらには、台湾から日本以外の国へ出張や旅行に行き、その後台湾に戻ってくると
とてもホッとするのである。
台湾の空港の空気を吸ったとたんに安らぐのである。
 
以上のように感じるのは、きっと、自分の行動範囲(ここで言う行動範囲というのは感覚的に自分の
テリトリーと感じている領域のこと)がいつのまにかジワジワと広がっているからなのであろう。
いつの間にか、自分はどんどんテリトリーを広げている。
 
このテリトリーは土地に限ったことではない。
学問だって、ビジネスだって、遊びだって、テリトリーは過去と比較すれば何十倍にも拡がった。
ラッキーにも24時間あれば世界の大抵のところに行けるし、インターネットを通じて星の数よりも
多い情報が手に入る時代に生まれたのだから、あとは自分次第でいくらでもテリトリーを
広げられるのだ。
 
今日、遠いと感じていた台中へ新幹線を使って1時間ほどで移動し、打合せ後、台中の駅で
帰りの新幹線を待ちながら、ふと考えた。
 
「すぐそこの台中、すぐそこの世界」

にほんブログ村 海外生活ブログへ