池波正太郎「男の作法」新潮文庫(1981年4月)
- 作者: 池波正太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1984/11
- メディア: 文庫
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岩瀬大輔さん推薦の本。
100ほどの話に分かれている。
そのうち、いくつかの話が(男として?)とってもためになった。
≪時間について≫
われわれの仲間で、年に二回ある会合に必ず毎回遅れてくるのがいるんだよ。
一人は絶対に間に合ったためしがない。
たまに遅れてくるのはわかるよ。
それが毎回なんだ。
こういう人は、自分が持っている時間、自分の生きている時間の貴重さも分かっていないんじゃ
ないかと思いますね。
自分の人生が一つであると同時に、他人の人生も一つであるのだ。
だから時間がいかに貴重なものかということを知っていれば、他人に時間の上において
迷惑をかけることは非常に恥ずべきことなんだ。
(P.97)
≪チップについて≫
今度、タクシーに乗ったときにだね、やってごらんなさい。
運転手が、お客さんが百円くれたとなれば、たとえ百円でもうれしくなって、
「どうもすみません、ありがとうございます・・・」
と、こう言いますよ。
そうすれば、その人がその日一日、有る程度気持ちよく運転できるんだよ。
それで、おおげさかも知れないけれど、交通事故防止にもなるんだよ。
少なくとも、次に乗るお客のためになっているわけだ。
みんながこういうふうにして行けばだね、一人がたとえ百円であっても、世の中にもたらすものは
積み重なって大変なものになるわけだよ。どんどん循環してひろがって行くんだからね。
だから、そのことを考えて実行することが、
「男をみがく・・・」
ということなんだよ。
ということは、根本は何かというと、てめえだけの考えで生きていたんじゃ駄目だということです。
大勢の人間で世の中は成り立っていて、自分も世の中から恩恵を受けているだから。
(P.128)
≪運命について≫
人間の一生は、半分は運命的に決まっているかもしれない。
だけど、残りの半分はやっぱりその人自身の問題です。
みがくべきときに、男をみがくか、みがかないか・・・結局はそれが一番肝心ということですよ。
それならば、男は何で自分をみがくか。
基本は、
「人間は死ぬ・・・」
という、この簡明な事実をできるだけ若いころから意識することにある。
もう、そのことに尽きるといってもいい。
何かにつけてそのことを、ふっと思うだけでも違ってくるんだよ。
自分の人生が有限のものであり、残りはどれだけあるか。
そう思えばどんなことに対してもおのずから目の色が変わってくる。
そうなってくると、自分のまわりのすべてのものが、自分をみがくための
「みがき砂」
だということがわかる。
逆にいえば、人間は死ぬんだということを忘れている限り、その人の一生はいたずらに
空転することになる。
(P.190)