自分がたった一人、宇宙を泳いでいる

最近、ふと気づいたことがある。
 
睡眠中にいろいろと思考していることがあるのである。
特に忙しいときなど、全力で突っ走っているときほどすごい勢いで思考をしているらしい。
 
自分でも驚くのは、山ほど片付けねばならない仕事があるとき、朝起きるとその日に
やらねばならないことが整理されている。
それだけではなく、どのように処理すればよいのか、そのアイディアまで明確にイメージしている。
正確に言えば、目覚まし時計が鳴る数分〜数十分前に少し目が覚めてきてはじめて、
自分の頭がそれまで強烈に思考活動を行っていたことを知る。
そして気づいたときには、上記のとおりとなっているのである。
 
あらためて考えてみると、会社に入って初めての上司がこんなことを言っていた。
「24時間、頭を使うことができる」
その言葉を聴いたとき、私はもうすでにその意味を実体験をもって明確に理解していたようだ。
だから、これは最近身についたことではないようだ。
 
さらに思い出す。
 
私には忘れられない一日がある。
その日からちょうど10年ほど経過しても鮮明に覚えているので、恐らく一生忘れないと考えられる
出来事がある。
 
あの日は、資格を取るための追い込みで夜遅くまで講習を受けており、深夜に自宅へ戻った。
疲れを感じ、コタツで横になりながら、いつのまにかつらつらと考えにふけっている。
 
当時、今以上に未熟で、悩みを多く抱え、弱かった私は、時間とは何か、実存とは何かなどに
ついて自由に思いをめぐらせている。
いつの間にか疲れが無くなり、思考が洗練され更なる思考を生むようになっているようだ。
 
ひたすら自由に思考を続ける。ここには自由しかない。自由に宇宙を飛び回っている感覚。
 
そしてついに、それまで約10年にわたって自分を貫いていた、重く暗い哲学的疑問から
開放される瞬間が来たのである。
簡単に言えば、「時間」に対する疑問への回答が出たのである。
そのときのイメージは、今でも鮮明に覚えている。
 
そのイメージとは、こうである。
 
自分がたった一人、宇宙を泳いでいる。
そこは静かで、全体的に真っ暗である。
しかしながら、なぜか心地よい。
生身の体ひとつで、スイスイと宇宙を泳いでいる。
 
とても不思議な体験であった。
 
今になって考えると、あの体験は実際、目が覚めているときに行っていた思考でない可能性がある。
疲れを感じていないのではなく、逆にあまりにも疲れ、コタツで横になったまま寝入っていた
のかもしれない。
 
資格を取るために必死に勉強し覚醒していた状態ですぐ寝入ったために、体を動かす脳の回路は
熟睡しているにも関わらず、考える脳はそのまま活動していたのかも知れない。
いずれにしても、あの感覚は一生忘れないだろう。
これが、初めての「睡眠時思考状態」だった可能性は大きい。
 
この不思議な感覚を言葉で説明することは難しい。
なぜ、このような状態になるのかも今の私の知識ではわからない。
しかしながら、あの日、この感覚を得られるようになってから、なぜか気持ちがとても
軽くなったのは間違いない。
 
「時間」に対する疑問や悩みが払拭され、あの日、何かが変わったのだろう。