ブルーノ・タウト「日本美の再発見≪増補改訳版≫」岩波新書(1939年)★★☆☆☆

日本美の再発見 増補改訳版 (岩波新書)

日本美の再発見 増補改訳版 (岩波新書)

  • 芸術自体は、定義せられえぬものであり、一切の計量と合理的な公式化とを拒むような領域である。しかしそれにもかかわらず芸術の領域は、知性に影響を与える。実際にも、もしこのことがなかったら、たんなる知性だけでは貧弱にして生産に堪えないであろう。それだから芸術は、合理的定義をいっさい否定するにもかかわらず、決して神秘的な、曖昧模糊たるものではない。芸術的な形、すなわち芸術の所産は感情に出ずる。感情がひとたび閑暇と安らかさとを得て芸術の事に集中すると、ついにはきわめて明確に肯定しあるいは否定するにいたるのである。美しい形は、その起源を尋ねるに由なきにせよ、こうして客観的な事実となるのである。
  • 建築の世界的奇跡たる桂離宮の御殿とその林泉とは、多くの関係の融通無礙な結合を表現している。個々の部分がそれぞれ具有する独自の力、その完全な自由と独立とは、それにもかかわらず鞏固な鎖のように円満具足した全体的統一を形成している。
  • すぐれた芸術品に接するとき、涙はおのずから涙に溢れる。私達は、この神秘にもたぐう謎のなかに、芸術の美はたんなる形の美ではなくて、その背後に無限の思想と精神のつながりとの存することを感得するのである。

 
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