内田樹「街場の中国論」ミシマ社(2007年6月)★★★☆☆
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: ミシマ社
- 発売日: 2007/06/02
- メディア: 単行本
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中国という国を大きな視点からとらえ、その本質に迫る素晴らしい本。
このような観点で特定の国を解説してくれると、国際関係をものすごく理解しやすくなる。
ぜひとも様々な国についてこのような本が出版されてほしい。
中国について
- 中国は総数1億4000万人の少数民族五十五集団を抱えています。日本の総人口よりも多い少数民族集団を抱えているんです。
- 今、中国政府が口にしている不思議なレトリックは、要するにデモをコントロールできていないのだけれど、あたかもコントロールできているかのようにふるまっていることの結果なわけです。
- 中国のような巨大で複雑なシステムは、単純なスローガンで国民的動員をかける以外に動かしようがないんです。毛沢東はその「単純な物語」をつくる天才だった。
歴史認識問題について
- 歴史認識問題というのは、具体的な歴史的事実そのものの問題ではなく、あくまで「認識」の問題なんです。ある歴史的事実を刻下の外交関係の中でどう位置づけるか、ということなんです。過去の事実が問題なのではなく、現在におけるその解釈が問題なんです。
中華思想について
- 中華思想は、天下すべてが中国を中心にひとつの調和した小宇宙を形成しているという宇宙観です。ここには国境線という概念がそもそも存在しません。
- 中華の中華たるゆえんは、周縁に夷狄がいることによって担保されている。
- 中国人は「国境線を画定する」というふるまいそのものに対して激しいアレルギーを持つ、ということです。
儒教について
- 孔子の政治哲学はすべて「これは私のオリジナルではなく、いにしえの聖賢の教えである」というかたちで述べられている。私は「創設者ではなく、祖述者にすぎない」というのが、「述べて作らず」ということです。(中略)創設者は自分にできることしか教えられないけれど、祖述者は自分の力量を超えることを教えることができる。