沢木耕太郎「旅する力 深夜特急ノート」新潮社(2008年11月)★★☆☆☆

旅する力―深夜特急ノート

旅する力―深夜特急ノート


長野県に向かう新幹線の中で、「深夜特急」にまつわるエピソードなどをまとめたこの本を手にとる。
 
この本を読んでいると、「深夜特急」を読んだときの感覚が少しずつ思い出されてくる。
そのときの衝撃と爽快感。
深夜特急」を初めて読んだのは、中学生あるいは高校生の頃であったと思うが、そのエッセンスは
いまも私の心の中に残っていたようである。
 
なぜ人は旅に出るのか。
なぜ私は旅に(しかも海外に)出なければならないといつも考えているのか。
自分なりの解は持っているつもりだが、沢木さんはその質問に鋭く独自の言葉で答えを出している。
 

(P.16)
旅は病のようなものかもしれない。それも永遠に癒されることのない病だ。

旅を重ねるほど、また旅に出たくなる。
旅は、なぜにこれほど魅惑的なのだろうか。
 

(P.253)
旅は人を変える。しかし変わらない人というのも間違いなくいる。旅がその人を変えないということは、旅に対するその人の対応の仕方の問題なのだろうと思う。人が変わることができる機会というのが人生のうちにそう何度もあるわけではない。だからやはり、旅には出ていった方がいい。危険はいっぱいあるけれど、困難はいっぱいあるけれど、やはり出ていった方がいい。いろいろなところに行き、いろいろなことを経験した方がいい、と私は思うのだ。

人には完成が無い。言いかえれば、常に変わっていかなければならないのである。
その機会を創出してくれるのが旅なのである。
 

(P.270)
言葉の問題だけでなく、旅は自分の力の不足を教えてくれる。比喩的に言えば、自分の背丈を示してくれるのだ。私の肉体的な高さは、他国の同じ世代の旅人に劣ることはなかった。しかし、人間の力としての背丈が足りなかった。
この自分の背丈を知るということは、まさに旅の効用のひとつなのだ。

旅をすることで、自分の背丈がわかってくる。
普段の生活の中では、得てして自分を過小評価したり、逆に自信過剰になったりしているものである。
旅は、自分そのものの姿をくっきりと映し出してくれるのである。
 
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