阿川弘之「大人の見識」新潮新書(2007年11月)★★★★☆
- 作者: 阿川弘之
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/11
- メディア: 新書
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これは評判通り素晴らしい本。
速く読むともったいない気がして、じっくりゆっくり読み進めていきました。
ユーモアの必要性や以下の箇所は自分に欠けているところなので、少しずつ
自分を変えていきたいと思った。
(P.131)
京大教授の中西さんから著者が聞いた、ギリシャの歴史家ポリュビオスの言葉。
「物事が宙ぶらりんの状態で延々と続くのが人の魂をいちばん参らせる。その状態がどっちかへ決した時、人は大変な気持ちよさを味わうのだが、もしそれが国の指導者に伝染すると、その国は滅亡の危機に瀕する。カルタゴがローマの挑発に耐えかねて爆発し、亡びたのはそれだ。」
「この言葉、近代の英国では軍人も政治家もよく取り上げる決まり文句。英国のエリートは、物事がどちらにも決まらない気持悪さに延々と耐えなければならないという教育をされている。世界史に大をなす国の必要条件ということです。」
今の時代では、「国」という文字を「会社」や「組織」へ変えて読んでも良いでしょう。
本質を突きこの重要なことに気づいた人もすごいが、それを長い間教え続けるイギリスという
国もすごいな、と純粋に思う。
今の日本に、このような考え方を指導してくれる人は何人いるのだろうか。
(P.188)
論語「為政第二」の「温故知新」という言葉について。
正確には「子曰、温故而知新、可以為師矣」です。
吉川幸次郎先生の「論語」(昭和40年、朝日新聞社)に、次のような解釈が出ている。
「温とは、肉をとろ火でたきつめて、スープをつくること。歴史に習熟し、そこから煮つめたスープのような知恵を獲得する。その知恵で以て新シキヲ知ル」。
肉を煮つめていい味のスープを取ろうと思ったら、強火でやっちゃいけないんだ。歴史を学ぶのも、にわか勉強で手早く片付けようとしたのでは駄目だよ、孔子はそう言いたくて「温」の字を使ったというのが吉川幸次郎先生の御見解です。
「温」という字、素晴らしいと思います。
誰かに書いてもらって、飾っておきたい字です。
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