小笹芳央「会社の品格」幻冬舎新書(2007年9月)★★★★☆

会社の品格 (幻冬舎新書)

会社の品格 (幻冬舎新書)


ずっと読みたかった小笹さんの本を読む。
 
まず、すべての文章が明快でわかりやすい。
また、整然とまとめられている。
読者への非常に繊細な配慮がひしひしと感じられる。
徹底的に相手の立場に立てる人でないとここまでの文章は書けない。
 
内容も目からウロコの連続。
久しぶりにアンダーラインだらけの読書であった。
 

(P.43)
人材流動化の時代、個人は自分のキャリア形成に真剣にならざるをえません。
個人がどこで働き、どんな技能を身につけ、どんな時間を過ごすかということの意味が、昔に比べて
はるかに大きなものになってきました。
 
社員が投資しているものは、人生で最も大切なもののひとつである、「自分の時間」や「自分の能力」です。
一日で最も長い時間を過ごす場所であり、しかも後の自分の人生を大きく左右するほどの影響力を
持っているのが会社です。
 
(P.153)
品格のない会社は、社員から意味と時間を奪う。

会社の寿命より個人の寿命の方が長くなったこの時代、会社から見れば「人材をいかに確保するか」
「社員のモチベーションをいかに高く保つか」ということの重要性が高まっている。
会社が見失ってはならない基本的な考え方が、上記である。
この箇所こそ、目からウロコ。
 

(P.115)
「品格のある上司」の必須条件
1. 専門性…「すごい」
  特定の分野に長けている、メンバーよりも経験が高い、ある分野で評判が高い。
 
2. 人間性…「すてき」
  人間としての魅力があるかどうか。
 
3. 返報性…「ありがたい」
  恩返ししたいと思えるほど、部下に関心を持ち、指導してくれる。
 
4. 一貫性…「ブレない」
  いついかなるときも、明確な判断基準を持ち、自らの言動もそれと一致している。
 
5.厳格性…「きびしい」
  規範からズレたときは厳しく叱れる、メンバーにも自分にも厳しい。
 
「品格ある上司像」
頭:品格のある上司は、主体的で、自分の頭で考える。
目:品格のある上司は、物事を色メガネで見ない。
耳:品格のある上司は、マイナス情報にも耳を傾ける。
鼻:品格のある上司は、数値化できない事柄でも鋭い嗅覚で判断する。
手:品格のある上司は、両手を広げ、他部署や部下とつながっている。
腹:品格のある上司は、腹をくくってリスクを恐れない。
足:品格のある上司は、頭でっかちにならず、現場に足を運ぶ。
口:品格のある上司のコミュニケーションは「報酬」になる。

自他の経験を振り返って上記を考えてみると、なるほどなと実感できる。
忘れてはいけないことがMECEで詰め込まれている。
 

(P.157)
「仕事の品格」を左右する6つのポイント
1.「納得感」のある仕事
 ・自分が顧客であるなら、喜んで自社の商品を買える
 ・自分の仕事を親しい知人に勧められる
 
2.「使命感」のある仕事
 ・仕事による「自己実現」「社会との接点を持つ」ことができる
 ・自分の仕事に、「命」を「使う」ほどの価値を、一人ひとりが求め、実感している
 
3.「効力感」のある仕事
 ・自分の個性や創造性が発揮できる仕事であること
 ・個人に選択の余地がある仕事

4.「普遍性」のある仕事
 ・その組織の中でしか通用しない特殊スキルではなく、社外でも通用する「普遍スキル」を身につけられる
 ・仕事で、スペシャリティやプロフェッショナリティの向上を感じられる
 
5.「貢献感」のある仕事
 ・自分の仕事が、どんなふうに会社の役に立ち、それが社会につながっているかがわかる
 ・誰かに貢献している実感、相手からありがとう!と言われる喜びがある
 
6. 「季節感」のある仕事
 ・心機一転、心が改まる機会がある
 ・「おかしいことを正そう」「挑戦しよう」など積極的な変革姿勢が生じる

これも素晴らしいまとめ。
 
自分が仕事に満足できていないと感じるときは、上記の項目に対してYESと答えられないことが
多いときである。
 
会社として社員のモチベーションをあげることとは、最大多数の社員に上記満足を最大化する
ということに尽きる。

(P.201)
個人に必要な3つの観点
 
1. 「自分株式会社」の視点
 この意識できちんと信頼残高を高めていくこと。
 お金にしかり、友人しかり、仕事しかり。
 自己責任の時代は、同時に自分次第で大きな自由を得ることができる時代。
 
2. 「時間投資家」の視点
 何より人生そのもの、命そのものである、「時間」を会社に投資していることを忘れてはなりません。
 無駄な「時間」を使うことは、それこそ命を削ることと同じ。
 よって、会社に対して受け身でなく、主体的に向き合うべきである。 
 
3. 「消費者」の視点
 会社の外の視点、社会人としての視点を忘れないこと。
 会社人であると同時に社会人であるという認識を持ち、その間に壁を作らない。
 あるいは、その双方を常に行き来できる感覚を持つ。

自分として、2項と3項はある程度意識していること。
これからは1項を重点的に考え、実践していこう。