気鋭のベンチャー経営者たちに学ぶプレゼン術

これも岩瀬さんのブログから。
「気鋭のベンチャー経営者たちに学ぶプレゼン術」

1. サビ、クライマックスから入れ

たとえば映画であれば、オープニングにまず、盛り上がる「ツカミ」のシーンをもってくる。そこでいったん観客を引き込んでから、「話は10年さかのぼって」と、ペースがゆっくりのシーンに戻っていく。

楽曲をCMに使う場合であれば、必ず「サビ」の部分を使う。HBSの授業も、第一回は教授の自己紹介もコース概要の説明もなく、まずいきなりケーススタディに飛び込んだ。しかも、コース全体を通じてもっとも面白く、盛り上がるやつ。かなり難しく、まだ泳げない人が、浮き輪をせずにプールに飛び込むようなもの。

いいプレゼンも一緒。

一番おもしろいところ、それはデモだったり、商品のプロトタイプだったり、リアルなケーススタディであったり、なんでもいいのだが、そこにいったん飛び込んでみて、聴衆の心をつかんでから、市場の全体像などを語るべきだろう。

2. 裏の裏(のウラ)をかけ

映画を見ていると、

「あー、どうせあいつが犯人なんでしょ」

とか

「あー、あいつが犯人と見せかけて、あのいいやつが実は犯人なのでしょ?」

とか、つねに先を読もうとする心理が人間にはあるようだ。

プレゼンを聞いているときも同じで、せっかちな我々は

「あー、あの話ね。あれって、〜がダメなんだよねー」

といった感じで、常に一歩先を読んで、ネガティブな情報を考えたりする。

だとすれば、プレゼンで大切なのは、「裏の裏をかく」ことではないか。

「あー、そのサービス。似たようなの他社もやってるけど、流行ってないよね」

「それでは、次にA社とこのサービスの決定的な違いをご説明します(資料が用意されている」

「あー、でもさぁ、ユーザーはこういうの面倒だから、使わないよね」

「次に、ユーザーに実際に触ってもらった体験談とアンケート結果をご説明します(データが用意されている)」

「ふーん、ちょっとは面白いかもしれないけどさぁ、web2.0ってカネにならなくね?」

「さらに、このサービスの3つの収益源を説明します。すでに何社かに非公式に打診したところ、〜なら払ってもいいと言っています(資料が用意されている)」

などなど。こう話したら、どういうツッコミが入るだろうか。それに対しては、どうこたえるのが説得的だろうか。その答えに対して、さらにどんなツッコミが入るだろうか。それに対しては、どんなデータを見せるか。いわば、シャドウボクシングのような形で、どれだけ深く、裏の裏のウラをかけるところまで準備しているか、によって、説得力のあるプレゼンが作られるのではないか。

3. エレベーターピッチ:最初の1分で、言いたいことを全部言い切れ

いつ、途中で打ち切られてもいいように、最初の1分でもっとも大切なポイントと、伝えたいことを話せるようにする。詳しい説明は、興味を持ってもらってからでいいから。ポイントを3つに絞った、分かりやすいストーリーか。

ネット生保でいえば、

? 年間45兆円の巨大市場
? そこにある大きな非効率(あなたも生保セールス、受けたことあるでしょう?)
? その巨大な市場がいままさに変わろうとしており、新規参入のチャンス大

というのが大きなストーリー。30秒で説明できます。大切なのは、臨機応変にプレゼンの「1分バージョン」「10分バージョン」「1時間バージョン」を行き来できるくらい、内容とポイントを練り上げていくことだ。

4. 勢い、情熱、パッション

月並みですが、もっとも大事かもしれない。やっぱり、明るく、大きな声で、元気いっぱいで、勢いと強い思い入れをもって、パッションたっぷりで語っている人は、ストーリーの説得力が5割増し。

たんたんと語られると(いま、目の前にたんたんと語っている人がいます)それだけで、説得力は3割減。

勢い、大切です。

5. 目の前にいる人に買ってもらえないんだったら、誰も買わないって

目の前で自分の話を集中して聴いている人が、「市場全体に流行るか分からないけど、少なくとも自分はそれ使ってみたい/人に薦めたい」と思ってくれないなら、どうしてもっとメッセージが薄くしか届かない、多数の人が買ってくれるだろうか?

ちなみに、ライフネットのプレゼンの後に、司会の小林さんが会場の皆さんに

「このプレゼンを聞いてライフネットの生保に入りたくなったひとー」

と聞いてくれたところ、9割以上の人が手をあげてくれました。終わってからも、何名もの人が「入ります!」「ホントですか?営業の電話しちゃいますよー」という会話多数。嬉しいです。

6. 「他人事」ではなく「自分ごと」とrelateしてもらえるか?

その際のポイントは、「共感・共鳴」「自分ごと」="relevance" のネタ仕込み

「あー、確かにそういうことあるある」
「確かに、こういうのがあったら超便利だよね」

と思ってもらえるかではないか。

これに対して、

「理屈では分かるんだけど、自分はいいや(他人事)」

と思われるようだったら、アウト。

7. 「生々しさ」「リアルさ」を追求せよ

6.の続きだが、ユーザー事例を写真などで交えたり、社内でもいいから、ヒアリングをしたりユーザー体験をしてもらったりすると、説得力が増すはず。リアルなユーザー像や現場の声を取り入れ、紹介する。

今日の名プレゼンでは、自分が空港から会場につくまでの写真だとか、行ったすすきののお店の写真や位置データや、来場している人を写真に撮って彼らにサービスをあてはめたりしたデモが、バカ受けしていました。

どうやって、プレゼンを聞いている人が、自分にrelatedできるか、その名シーンづくりに知恵を絞るべし。

8. インパクトあるファクツやデータを示せ

「よさそう」とか「面白そう」というのは主観であるが、データはどんな主観的なものより強い。

我々であれば、

「年間45兆円の市場」「GDPの約1割」「年間53万円の保険料」

などなど、大きな数字を投げたのが、インパクトがあったようだ。

小さな独自調査でもいい。

「n=60の調査ですが、82%の人が、〜は使いたいと言っています」

みたいなものでも、データがあるか否かで、説得力はまったく違う。

9. とことんリハーサルせよ

制限時間が6分、と決まっているのに話が終わらない人が何名かいた。願わくば、6分なら3分で言いたいことを全部言い切るつもりで、何度もリハーサルした方がいい。10分なら5分で終えるつもりで。どうせ、50%くらいは時間オーバーしちゃうんだから。

あと、プレゼンで緊張してしまう人がいるが、これも練習の数だと思う。「なぜ緊張するか」というと、結局「自信がないから」に尽きると思う。「この話をしたら絶対にウケル」とわかっていたら、絶対緊張しないですから。3回の練習で緊張するなら、10回、20回やる。親しい人に聴衆となってもらい、改善点を出してもらう。さすがに、20回もやったら、全然緊張しなくなりますよ。

10. 笑いを取れ

これは私も苦手なのですが、やっぱりユーモアたっぷりで笑いを取っていた人たちは、会場も和んだし、話もよく聞いてもらえていたような気はする。笑いを嫌う人はいないはず。どんなに緊張した交渉の舞台でも、ユーモアは大切。だとすれば、新企画プレゼンではなおさら。

狙ってもできないので難しいが、少なくともトライする価値はあるだろう。

 
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