藤原正彦「国家の品格」新潮新書

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)


第四章から第七章までは「なるほど」と思いながら読んだ。
筆者が強く語る「武士道精神」について、もっと学んでみたいと思った。
しかしながら、第一章から第三章までは正直言って苦痛。
特にグローバリゼーションや、自由、平等、民主主義についての考察は、
私見だが甘いと思う。また、一部分を全体として拡大し、形而上学的に
述べてしまっているのは執筆者として良くないと思う。
特に違和感を感じたのは「グローバリズムが世界をアメリカ化、画一化する」
と言い切ってそれで終わってしまっていること。これは私が学生時代の
グローバリズムに対する懸念であって(1990年代、俗に言う
グローバリゼーション2.0まで)、Web 2.0などグローバリズムそのものの
意味が大きく変わったグローバリゼーション3.0の現在、ここで考察が
ストップしてしまうのはどうかと思う。
また、自由や平等に関しても「自由と平等は両立しない」と言っているが、
そんなことは国際関係論を学ぶ誰もが、一番はじめに突きつけられる
当たり前の問題であり(私の場合は大学一年生のとき)、そこで議論が
ストップし結論付けている感じ。
私のように国際関係を専門で学んできたものから見れば、ちょっと、
これは無いんじゃない?と言ったところである。
2006年の新書No.1で220万部突破ということだが、一般の方がこの本の
前半を読んで、勘違いしてしまうことが大変心配である。
いずれにしても個人的には、後半は良いことが書かれているので
ためになった。