岩瀬大輔「金融資本主義を超えて 僕のハーバードMBA留学記」文春文庫(2009年5月)★★★★☆
金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)
- 作者: 岩瀬大輔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/05/08
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 37回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
以前読んだ「ハーバードMBA留学記」の文庫本。
もう一度読んでみたいと思い、手にとる。
岩瀬さんは私と同じ年に同じ県で生まれ(共通するのはこれくらい)、その後華麗なる経歴を
積んで現在はネット生保を経営する経営者。
その岩瀬さんがハーバードビジネススクール(HBS)で学びながら日々綴ったブログをまとめた
本である。
特に印象に残ったのは、岩瀬さんが出席したHBSの入学式でのフレーズ。
「これからの二年間は、あなた方を根本から変革する体験(Transformational Experience)となるでしょう」
岩瀬さんが綴ったこの刺激的な日々は、まさしく自分の考えを根底から覆す連続であったのだろう。
経営について最新の事例や理論を学ぶことができるということよりも、ものすごい頻度で自分を
劇的に変えるような体験に出会えるということが、心の底からうらやましい。
一方、このような貴重な体験やその時々に岩瀬さんが感じたこと、考えたことを、こうして
自宅にいながらわずか数百円のお金で知ることができるという、本というもののありがたみを
あらためて感じることができた。
さらに、文庫本のためのあとがきの最後の箇所に出会えたことだけでも、この本を読んで
よかったと思った。
留学するまでの自分は、いつも通過点にいるような気がして、早く次の地点へたどり着きたいと思っていた。しかし、留学をきっかけとして、人生は旅そのものであることに気がついた。A地点からB地点へと、少しでも早く辿り着こうとすることが目的ではない。大陸を鉄道で旅するように、車窓から見えてくる美しい景色、聞こえてくる音、入ってくる匂いを味わい、ともに旅をしている同乗者との対話を愉しむ。その一分一秒が、旅そのものなのである。そのように考えることができるようになってから、多忙な日々の中でも、壮大な目標に近づけない悔しさを感じながらも、どこか、内なる平和さと豊かさを覚えるようになった。