酒井穣「『日本で最も人材を育成する会社』のテキスト」光文社新書(2010年1月)★★★★☆
- 作者: 酒井穣
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/01/16
- メディア: 新書
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人材育成に関する良書。
後日あらためてこの本を読み返し、図式化して活用しよう。
- これからの人材育成の実務は、「研修のデザイン」ではなくて、「経験のデザイン」という方向に向かう。この点において経営戦略のギアを正しくシフトさせることができない企業は、驚くべき速度で世界中の企業から取り残されることになる。
- グローバル化、このプロセスは線形ではなくて、加速度的に進行するプロセス。(中略)好きか嫌いかにかかわらず、グローバル化は止められない。
- 将来的には世界規模で「同一スキル、同一賃金」が実現する。
- 組織には学習能力という観点から見て、「積極的学習者(全体の10%)」「消極的学習者(全体の60%)」「学習拒否者(全体の30%)」の3種類の人材がいる。
- ハイパフォーマーは共通してメール等へのレスポンスが早い。
- 完璧であることよりも、「他人が笑って許してくれる弱点」を持つことで、周囲の皆から愛されることこそ、成功にとってなくてはならない要因。
- 物事を自分の頭で考えるということは、周囲の「流れ」に身をまかせて生きるのをやめるということであり、「空気」に従わない強さを身につけること。
- 「ガス抜き」の基本は「笑う機会を増やすこと」。
マネージャーに求められる5つの機能
機能1:個の力
- 現実(is)ばかりでなく、どうあるべきか(should)についてのビジョンを持っている
- 自分の責任範囲を超えて、全体のために「善いこと」をする気力が充実している
- 他の皆があきらめるような最悪な状況でも、ポジティブに、笑顔で前進することができる
- 問題にあたっては、なんでも我流でこなそうとせずに、まずは理論(先人の知恵)を参照することができる
- 少なくとも2つの分野において、社内では専門家と言えるレベルにある
- 数多くの挫折や修羅場を乗り越え、他人に認められる成功体験を経てきた
機能2:指示
- 多種多様な仕事の経験を通して、会社の仕組みに精通している
- ビジネス一般について、十分な教養を持っている(マーケティング、会計、IT、グローバル)
- 会社レベルで、物事のプライオリティーを理解することができる
- 目的を達成するためのタスクを、ロジカルに分解することができる
- 指示を出す相手に、適切な「粒度」で指示を出すことができる
- 押しつけにならず、部下も納得する形で指示を出すことができる
機能3:報告
- いかなる物事も測定し、グラフや図として報告する習慣がある(測定できないものは管理できない)
- 経営者が把握すべき指標(KPI)を理解し、つねに最新の数値を記憶し、必要に応じてアラートを出せる
- 経営者にエスカレーションすべき問題と、そうでない問題の切り分けを間違えない
- ホウレンソウの徹底が組織内に浸透している
- 報告を待つのではなく、部下のところに情報を取りに行く態度をとる(悪い情報は隠される)
- 部下が報告している事柄が、「事実」なのか「意見」なのかをつねに気にする(ファクト・ベースが理想)
機能4:社内外の個人や組織との連携
- 他部門の目標を理解し、その目標達成を積極的にサポートする姿勢がある
- セクショナリズムを嫌い、他部門との意見交換や人材交流を積極的に行う
- 部門をまたがる組織横断プロジェクトで、リーダーシップをとることができる
- 会社の代表者として、社外の目から見て恥ずかしくない対応がとれる(品格とビジネスマナーへの配慮)
- 利害が対立する現実から目を背けずに、交渉すべきときはどこまでも交渉する強さがある
- NDAやコンプライアンスなど、社外の人々と連携するときに必要な法務規定を遵守できる
機能5:組織力の強化