御立尚資「経営思考の『補助線』 変化の時代とイノベーション」日本経済新聞出版社(2009年6月)★★★☆☆

経営思考の「補助線」

経営思考の「補助線」


幅広い教養を用いて、21世紀のグローバル社会における経営について綴った本。
経営に関しての話が中心だけれども、複数の観点から勉強になった。
 

(P.18)
眼前の波だけに気を取られている子どもは、沖へ向かって引いていく潮の流れに全く気づかない。潮の満ち引き、あるいは、海流といった大きな力の存在を、学校で知識として習い覚えてからも、目の前の波についつい目を奪われてしまうものだ。
ただ、知識がついてから、実際に沖に流されてしまった時の恐怖心は、それを知らなかった時の比ではない。もっともっと流されてしまうのではないか、ひょっとすると岸に戻れなくなってしまうのではないか。なまじ大きな力の存在を頭でわかっているだけに、より悪い想像がどんどん膨れてしまい、恐怖心に包まれてしまう。

(P.113)
どんなに頑張っても、戦略というのは「事前の準備」に過ぎない。未来を完全に読みきり、過去のデータに依存しないで「完全無欠な」戦略を立てることなど、できるはずがない。
あくまで、「人事を尽くして」という世界観であり、実行段階に入った瞬間から、競合の動きをはじめ、「何か予想もしていなかったことが、当然起こるはず」という前提で、組織全体が動いていく。これが、強い企業の共通項だと思える。

(P.221)
企業のリーダーに必要な要件
1. 先が読めない状況の中で、組織の中にはびこりがちな不安感を払拭できる「明るさ」
2. 一方で、短期、中期、長期といった複数の時間軸を見わたしながら、冷静に状況を判断し、「深く読むべきこと」と「読んでも仕方がないこと」を切り分けられる「ウィズダム」
3. 自らとタイプの違う異質の人材を活用し、さらに自分の目的達成だけでなく部下の自己実現を支援することで、より強いモチベーションを持ったチームを作り上げ、動かしていける「懐の深さ」
「この人はすごい」と思わされるリーダーには、何らかの形で、この三つの要件が備わっているように思える。
当然ながら、この三つの要件を身につけていくプロセスも人それぞれなのだが、「教養」を身につけるべく努力を続け、かつ、いずれかのタイミングで相当の「修羅場」体験をしている方が多いように見受けられる。

(P.236)
単純に語学力の問題だけではない。多国籍、多文化の中で、相手の本音を読みながら、論理と感情の両面で議論をリードし、必要以上にしこりを残さないように、意思決定を勧めていくというのは、容易なことではない。

 
★↓ランキングに参加中。ワンクリックするだけで投票になりますので1日1回クリックをお願いします。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ