岩崎純一「音に色が見える世界」PHP新書(2009年9月)★★★★☆

音に色が見える世界 (PHP新書)

音に色が見える世界 (PHP新書)


たまたま本屋で見つけ何気なく購入したこの本が、自分の発想をダイナミックに
拡げてくれることとなるとは思わなかった。
 
しかしながら一方で、このような偶然が起きる回数が最近は増えており、
セレンディピティ力が高まっているのを直感として感じているのも事実である。
  
さて、本書は「共感覚」を持つ著者が、その世界を分かりやすく説明すると同時に、
その「共感覚」を切り口として日本人の日本人たる所以に踏み込み議論した本である。
  
そもそも「共感覚」とは何か。
一見、とても信じがたい感覚であるため、「著者は嘘をついているのではないか」と
考えてしまうが、本書を読み進めると直感的に嘘ではないことがわかり、
次第にそのすばらしい世界に引き込まれていく。

(裏表紙、P.55から抜粋)
・すべての文字の形状に色が見える。
・西洋音階のみならず、あるいは音楽の音のみならず、世の中で鳴っている音のすべてに色が付いて聞こえる。
・字に色が見えたり音が聞こえたりする、味に色が見える、風景に音が聞こえる、時間に色が見える、匂いに色が見える、音に匂いがする。

 
筆者によれば、これらは比喩ではなく「感覚」として感じるらしい。
簡単に言えば、我々が区分する「5感」というのは、実はそれ以上に複雑な感覚から
構成されていると同時に、聞く、見る、触れるなどの感覚がそれぞれで独立して
いるのではなく、包括的な感覚の中で「聞く」などの側面が強いだけであるという。
 
第1章は、この「共感覚」についての分かりやすい説明が主であり、それだけでも
本書を手に取った価値があるのだが、さらに驚くべきは第2章、第3章である。
 
筆者は、この「共感覚」というのは誰しもが乳幼児の頃は持っている感覚であるし、
過去の時代を生きた人々は自然に備わっていた可能性があると指摘する。
  
さらに、日本人的な共感覚についても解説。
ここでは到底紹介しきれないので割愛するが、驚愕に値する内容である。
 
最後に、自分のライフワークに関して、今後大きな影響を与える可能性がある
重要な一文をメモ。

(P.216)
仏教的な空や無と、なんとも色彩豊かで華々しい共感覚とは、まったくの別物だと思われるかもしれない。しかし、共感覚というのは頭が空っぽのときに感覚できるものだと言ってもよいと思う。空っぽというのは、今で言う知性や理性を捨てるということではない。教養や品性を捨てることでもない。子どもに戻る、男性の本随に戻るということだ。ましてや共感覚を失った人が、それを取り戻そうと思って、人工的に共感覚を作るとか、右脳がどうだとか、スピリチュアルだとか言ってもがくのは、人としてもっての他だと思う。

 
脳科学が全く追いつかない領域が、ここにもあった。
知れば知るほど世界は知らないことに満ちている。
ああ、面白い。 
 
★↓ランキングに参加中。ワンクリックするだけで投票になりますので1日1回クリックをお願いします。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ