所眞理雄・茂木健一郎編「脳の中にいる天才」日経BP社(2009年9月)★★★☆☆

脳の中にいる天才

脳の中にいる天才


創造性を切り口としているので、当然ながら子育てや教育に有効な知識が盛り込まれており
参考になった一冊であった。
 
1. アラン・スナイダー

(P.17)
成績なんかよりも重要なのは、いかに苦闘するかを学ぶこと、いかに逆境から立ち直るかを学ぶこと、いかに自分自身を順応させるかを学ぶことです。あえてリスクを取り、広く受け入れられている知識に異議をとなえることが、何よりも大切なのです。

(P.18)
「創造性とは一種の反抗である」ということです。(中略)ブレークスルーは反抗によって実現するからです。(中略)子どもたちに「他のみんなと同じになれ」と決して言ってはいけないということです。

(P.20)
ほとんどの人は、何か新しいものを目にしても、そこに学ぶべきものがあることを認識できません。(中略)私たち大人は、幼児と違って、五感で感じ取ったままに世界を見ることができません。自分の「マインドセット(思いこみ)」を通して世の中を見ているのです。
(中略)人間の脳がマインドセットを獲得したことで、進化においてとてつもないメリットがあった一方、さらなる飛躍を遂げるためには、それが逆に足を引っ張っているのです。

 
2. エルンスト・ペッペル

(P.45)
私たちは起きたことから意味を創造するのです。

(P.52)
実は、どの神経細胞も、最大で4つの段階を経れば、他のどの神経細胞にも影響を及ぼすことができます。そのため、脳内の処理を完全に独立して行うことはできないのです。(中略)つまり、感情的な評価や記憶との関連なしで、脳が何かを知覚することはないのです。(中略)そのため、創造的なプロセスも、感情と無関係ではいられません。

(P.53)
神経系全体のネットワークのうち、生まれてから初めの10年間で確認されなかったものについては、後から簡単に利用することはできません。そのため、生まれてすぐの動物に対する「刷り込み」は、特別な学習の形態といえます。刷り込みはネットワークの設定に欠かせないものであり、そこから将来の創造性へとつながっていくのです。ハブがたくさんできればできるほど、さまざまな領域で多くの確認がなされ、モジュールの相互結合が豊かになっていきます。例えば、生まれて10年間でひとつの言語しか覚えなかったのに、外国語訛りなしで別の言語を話すことができる人を私は知りません。(中略)同じことが感情についてもいえます。感情も、ある程度までは遺伝学的に決められていますが、そのネットワークが豊かになるためには、初期の段階で確認される必要があるのです。

 
3. フィリップ・ロシャ

(P.103)
観客なしでは、私たちはやる気を失ってしまうのです。私たちが本を書いたり、絵を描いたり、音楽を奏でたりする時には必ず、読んだり見たり、聴いたりする人たちがいるものです。他人がいないのに何かを行うことは考えられません。そのため、創造性については、孤立した自閉的な状態で考えても意味がないのです。創造的な行動の向こうには、いつも他人がいるからです。

 
4. ルック・スティールス

(P.187)
耳の聞こえない子どもたちが一堂に会した時、自然発生的に「手話」が生まれたのです。(中略)このような特殊な状況でなくても、子どもたちには創造性をはぐくむ社会的な文脈があります。幼い子どもたちは、一緒に遊ぶことで創造的になり、驚くほど独創的な絵を描きます。

(P.191)
もし天才がひとり部屋の中に押し込められていたら、何も起きないでしょう。天才を挑戦へと向かわせるためには、観客と、非常に批判的な顧客が必要なのです。

(P.194)
この世界が進歩してきたのは、このような好機と役割との組み合わせによってなのです。他の誰かが何かをしようとしているのを見て、「あ、自分にはたぶんそれができる!」と思う。そして、実際にどのようにすればそれができるかをやって見せるのです。創造性(と関連するあらゆる種類の感覚)とは、このような性質のものなのではないでしょうか。もしあなたが孤立した個人に注目して世界中で起きている全てのことを理解しようとしているなら、創造性の非常に重要な要素を見逃していることになります。

 
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