梅田望夫「シリコンバレーから将棋を観る 羽生善治と現代」中央公論新社(2009年4月)★★★☆☆

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代


将棋のことはまったくわからないけれども、梅田さんの本ということで早速購入し読了。
 
今はなかなか時間が取れないためだいぶ先になってしまうと思うけれども、将棋をもっと知りたいと
純粋に思うことができたことと、将棋という世界がウェブという世界に共通する宇宙を持っていると
いうことに気づけたということだけでも価値のある本であった。
 

(P.47)
羽生は将棋の世界の情報について、グーグルは世界中のすべての情報について、「量が質に転化する瞬間があるはず」という同じ仮説を持ち、羽生はその仮説を、コンピュータによってではなく、自らの頭脳の中で検証しようとしている。

私は、量質転化について理論的に根拠がないのだけれども、なんとなく直感で正しいことで
あると考えている。
これは、もっとも複雑かつ効率が良い脳のシステムそのものであると思っているからである。
将棋の世界では、それを人前で実践しようとしている人がいるのであるから、将棋に対して
興味を持ってしまうのはある意味で知的好奇心がある人にとっては自然なことである。
 

(P.289)
現代将棋においては、才能に恵まれるだけでは十分ではなく、そのうえで、尋常ではない努力を長期にわたって持続できる人しか、トップには到達できなくなった。これも現代社会の在りようを象徴しているように思う。
(中略)「対象(将棋)への愛情の深さゆえの没頭」という共通の基盤の上に、それぞれ独特の「際立った個性」が加味されてこそ、「超一流」への壁が越えられるのだと学んだ。そのエッセンスを一言でまとめれば、
「超一流」=「才能」×「対象への深い愛情ゆえの没頭」×「際立った個性」
という方程式になる。

才能だけでは十分ではなく尋常ではない努力を長期にわたって持続することが必要、というのは
仕事などを通じて本当に日々実感していること。
自分にとっては恐い時代になってしまったと思うけれど、このような競争が世界を飛躍的に
発展させるし、このような人たちが増えていけば(量が増えれば)、飛躍的な質への転化が
行われるという好循環を生むだろう。
 
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ