日本経済新聞社編「まるごとわかる中東経済」日本経済新聞出版社(2009年2月)★★★☆☆

まるごとわかる中東経済

まるごとわかる中東経済


日本人にあまり馴染みが無い中東について、偏りなくしっかりとまとめあげた良書。
 
中東というと石油とか、イスラムとか、画一化した固定観念だけで考えてしまう日本人が多いが、
そういった誤解や偏見に近い固定観念を、グローバル化時代には早く捨て去る必要がある。
そのためにも、こういった貴重な本が多くの日本人に読まれることを望む。
 

≪イスラム教≫
・7世紀に生まれたイスラム教の信徒数は18億人近く。現在も人口増加や改宗などから急増中、キリスト教の21億人に迫る。
・戒律はかなり厳しい。コーランの中の義務は五つ。五行と呼ばれる「信仰告白」「礼拝」「喜捨」「断食」「巡礼」。
・「礼拝」は一日五回、聖地のメッカに向かって祈る。
・「断食」は「ラマダン」の一ヶ月間に日の出から日没まで飲食や喫煙、性行為などは一切行わないこと。
・豚肉を食べない。(ユダヤ教と同じ)妻は四人までしか持ってはいけない。

 

≪経済≫
・ドバイの石油部門は90年にGDPの35%を占めていたが、現在は5%。
・ドバイには世界の建設用クレーンの三割以上が集結している。
・エジプトは人口7千万人超。魅力は賃金の安さ。月60ドルで十分に働き手がみつかる。
・中東の特に湾岸諸国が発展した背景には、海水淡水化の進展がある。
・各国による激しい水争奪戦の歴史がある。(これはアフリカも同じ)
・水は世界で四千億ドルビジネス。

 

≪主な対立≫
中東には複雑な対立構造がある(イスラエルの背後にいるアメリカも重要な存在)
・イスラエル対イラン
・イスラエル対アラブ諸国
・イスラム過激派対穏健派
シーア派対スンニ派
アラブ諸国同士の主導権争い

 

≪その他≫
・中東諸国では、首脳から街の店員や門番までが日本に対して好意的。
・産油国では国が石油資源を管理して収入を直接集め、それを国民に分配・還元する。
 一方、非産油国では歳入は国民から税として集められ、それが国民に再分配される。
イスラム金融は、金利収入がタブー。
・イスラエルでは、女性も含めて国民全員に数年間の兵役義務がある。

その他、有益な情報が多数あり。
 
★↓ランキングに参加中。ワンクリックするだけで投票になりますので1日1回クリックをお願いします。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ