五木寛之「人間の覚悟」新潮新書(2008年11月)★★★★☆

人間の覚悟 (新潮新書)

人間の覚悟 (新潮新書)


「大人」である五木寛之さんが「本質的な話」を綴った本。
この本は、10年に一度くらい、手に取って何度も再読したい本である。
 

(P.75)
「登山」という言葉を聞くと、私はいつも不完全な言葉のような気がします。なぜなら、登山した人は必ず下山をします。登ったきりで終わるわけではなく、山登りには必ず山下りというのがあって、登山に成功したなら今度は安全に下界までたどりついてはじめて「登山が成功」したことになるからです。
登頂することだけが登山の目標ではない。きちんと安全かつ優雅に山を下っていくことが、人間にとって大切なのだと私は思います。
(中略)人生百年という今の時代でいうなら、五十歳くらいまでに山を登りつめたなら、そこで十年くらいは頂上にとどまったとしても、それから先は六十歳からの長い下山をはじめないといけないわけです。
(中略)下山は決して寂しく惨めなことではないし、穏やかで豊穣で、それまでの知識や情報では及びもつかなかったような知恵にふれる、そういう期間であるはずです。山を下りるその時は疲れているだろうと思いますが、その疲れは人生の正しい疲れであって、ひたすら上を目指して競争している間は、気がつかなかったことが感じられる。

上を目指すことが正しいとされ、そのような教育がまかり通っているが、このように言われると
逆に下山の仕方について語る人がほとんどいなかったことに気づかされる。
多くの人はあまり考えていないけれども、これはとても重要なことなのではないだろうか。
 
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