武者小路実篤「愛と死」新潮文庫(1939年)★★★★☆

愛と死 (新潮文庫)

愛と死 (新潮文庫)


実篤が涙を流しながら書いたとされる渾身の作を久しぶりに手に取る。
 
純粋に感動するすばらしい作品である。
人を想う心の清さとはかなさが見事に描かれている。
名作であると言っても過言ではないだろう。
 
なお、この作品の中でためになった個所があったので紹介。
 

(P.17)野々村の随筆
「自信の強いことはいいことだが、他人の長所を認めないことで自信を無理につくろうとするのは醜い。他人の長所は何処までも認め、又他人を何処までも成長させて、他人の価値を十分認めての上の自信は美しい。しかし本当の自信が持てないものは、とかく他人の長所を見ずに短所を見出してはかなき優越感をたのしむ」

人と人との関係というのは、いつの時代もゼロサムではない。
 

(P.45)誰かの言葉
「淋しさの谷、涙の谷をさまよわぬものは、人生を知ることすくなし。」

この言葉が本当かどうかは知らない。
できれば本当かどうかを知らずにいたいと思うのが人間の性かもしれない。
 
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