野田稔ほか「中堅崩壊 ミドルマネジメント再生への提言」ダイヤモンド社(2008年3月)★★★★☆

中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言

中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言


 
企業の組織やミドルの分析とあるべき姿の模索を行った本。
かなり本質に迫っており読んでいて面白い。
 
今の日本企業にはリーダーシップ、変革力、論理的思考、企画力、戦略的思考、
グローバル志向、組織改革に対する意欲、哲学などに欠ける人材が多いと
普段から思っている。
 
頭でっかちの理論志向ではなく、これらを実務に活かして更に上を目指し、
常に自己革新行っている人が何人いるだろうか。
肝心なことをほとんど学ばず、同じような仕事を十年以上続けている人が多い日本企業。
これではグローリティの時代に生き残ることはできない。
 
これら、考えない、変わろうとしない人材を大量に抱え込んだ日本企業が
変わるためのヒントがたくさん盛り込まれている。
私も普段から考えていることだから、思考の整理に役に立った。
 
とてもためになるので会社の同僚や管理職に読ませたいが、約400ページの
この本を渡しても読まないだろうなぁ・・・。
 

(P.10)
組織の末端で、彼ら(バブル入社組)は極めて狭い範囲のスペシャリストになってしまった。事務系の単能工だ。企画力も戦略論も、幅広い交渉能力も、人材ネットワークも、リーダーシップも、彼らには学ぶ機会がなかった。多能工になる道も閉ざされていた。
こういう人たちのことを、我々は「塩漬け君」と呼んでいる。

十数年、同じ仕事をしていれば誰だってそこそこその仕事はできるようになる。
それに甘んじて妙なプライドと自信だけを持っている人材が多い。
 

(P.27、31)
今求められているのは、「自立するミドル」「創造するミドル」「変革の担い手となるミドル」である。常に変革と多様性が求められている。チェンジリーダーであることが求められているのである。

周りを見渡すと、変革が仕事であることを十分認識し、アクションを起こしている
管理職というのは限りなく少ない。
そもそも、そのような仕事をしたことがないし、変革やイノベーションに対して
十分な知識を持たない(持とうとしない)のであるから当然だと思う。
 

(P.38)
学びのプロセスは、「守・破・離」。
まずは「型にはまる」「真似る」。それができるようになってから「型を破る」。すなわち自らの個性で改善をする。そしていよいよ独自の型をつくり、慣習から「離れる」。
その過程で型を破るためには人に教えるという方法が効果的なのだ。人に教えるという行為を通じて、自分の中で知識が体系化されていないことに気づいたり、弱点を知ることができる。そこで学び直しが起こり、より重要なこととして、自分の知識を構造化していくきっかけとなる。
(中略)ところがバブル入社組は、教える側の先輩と自分たちのバランスが悪く、教わるべき時期のOJTが希薄になってしまった。しかも、次に自分が教える立場になるころには、採用抑制で下の者の数が十分でないという悪条件が重なった。学びのプロセスが不十分なのだ。

「学び」について徹底的に考えることなしに、爆発的な成長はあり得ない。
忙しいといって夜遅くまで残業し仕事をしていると勘違いしている人材は、最も重要なことを
考える時間を割いていないのではないか。
だから、人に「学び」を与えるとき、すなわち部下や後輩を指導する際も、
ひたすら自分の価値観を押し付けることしかできない。
 

(P.46)
企業の側から見れば、顧客はさらに細分化されていくことになる。しかも、それぞれの市場、顧客層に対して、強い関係性を築いていかなければならない。顧客を「個客」としてとらえる必要がある。
顧客が多様化する以上、組織も多様化せざるを得ない。組織の小括り化が進むのである。

(P.48)
ミニ社長がたくさん必要になる時代。
つまり、経営感覚を持ったリーダーがたくさん必要になる。
このような小チーム組織では、無駄なメンバーの存在は命取りになる。
それぞれの人材が自立的に活動して、自らの文脈をつくり上げる。
(中略)つまり、ルールが変わってしまったのだ。

(P.54)
マーケティング力と企画力を有する人材が必要。(中略)「創造するミドル」である。

(P.97)
「中堅崩壊」は、「従来型の中堅=中間管理職を中心とする企業の組織構造の崩壊」と言い換えるべきかもしれない。従来の中堅の役割自体が組織の中から消えていこうとしているのだ。

顧客が変わり、ルールが変わり、求められていることが変わっているのに人材が変わっていない。
その人材をひたすら叱咤している管理職ほど滑稽なものはない。
 

(P.118)伊藤忠商事会長 丹羽氏の話
(シンガポールの有名な経営者と話した際)「日本人というのは常に自分のことばかり、自分の国のことばかりに執着している。日本あはもういい」と言うのです。だから彼らは米国やEUに行って、優秀な人間を集めているというのです。これもグローバリゼーションの恩恵です。日本などお呼びじゃない。ところが、日本人は依然として自国中心で、自分たちのことばかり話題にしている。
このことが、私はミドルクラスの成長を妨げている元凶だと思っています。
世界中のビジネスパーソンを相手にしていかなければいけないときに、隣のビジネスパーソンと競争している。そんなこと、まったく意味がありません。井の中の蛙同士が競争したって、所詮、井戸の中からは出られない。
(中略)ミドルの人たちが、最初に気がづかなければいけないのが、この点なのです。

グローバル志向。
そのセンスを持つためには世界に目を向け、今何が世界で起きているのかを自分の目で、
肌で実感しなければいけない。
その、「危機感を持つための努力」の必要性が軽視されていると思う。
 

(P.120)
部下を働かせないようにしようと思えば、三つのことを徹底すれば良い。
「無視する、任せない、褒めない」。

これをやったら、人間は病気になるか、辞めてしまう。
逆を行えば、すなわち、「認めて、任せて、褒める」をやれば皆一所懸命働くはずです。

このような言葉をさらりと言えなければ、管理職とは言えないだろう。
 
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